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みんなのところに戻ってきた俺達を、「ご苦労様でした」と出迎えたのは栞だった。ちなみに真琴はじーっと天野を見つめており、あゆはまだうぐうぐしていた。
Fortsetzung folgt
「そんなことしてないよっ!」
「で、立てるようになったか?」
「うぐぅ……。もうちょっと待って……」
どうやら、まだ腰が抜けたままのようだった。
一方、香里が名雪に声をかける。
「名雪、目の前で恋人が浮気して、イチゴサンデーでOKっていうのは、あんまりじゃないの?」
「いいんだよ。だって、判ってるもん」
笑顔で答える名雪に、香里は「はいはい」と肩をすくめた。
俺は、天野の方に視線を向けた。
今の騒ぎの間も、こちらに視線を向けようともせずに、天野はじっと社を見つめていた。
と、不意に動く。
即席の矢をつがえて、ふっと放った。
「天王蒼穹流、一の矢。翔」
その矢は真っ直ぐに社に向かって飛んで……いかない。
途中でぴたりと止まったのだ。
だが。
「はっ!」
天野が気合いを掛けると、再び矢は、何事もなかったかのように飛んだ。そして社の壁に突き刺さる。
次の瞬間、天野は駆け出した。弓を片手に社に駆け寄ると、そのまま入り口の前に立ち、戸を引く。
ガラッ
あっけなく戸は開き、そしてその中には、一人の男が床に突っ伏すように倒れているのが、俺達の所からも見えた。
俺は社に駆け寄ると、その中を覗き込んで見た。
他には誰もいない。ということは……。
「……あいつが?」
「ええ」
こくりと頷いて、天野は壁に突き刺さっていた矢を抜いた。
「彼が、この社の周囲に強固な結界を張っていたんでしょう。先ほどは、知らずに触れてしまったおかげで不覚を取りましたが……」
「触れたらどうなるんだ?」
俺が突っ込むと、天野はついっと視線を逸らした。
代わりに真琴が「はいはい」と手を上げる。
「真琴たちがここまで来たら、美汐が縛られてたのっ。それで助けようって思って近づいたら、なんかびりっときて、そのままわかんなくなったのようっ」
「まこさんの言うとおり」
舞も頷いた。
そこで気付いたのだが、他の全員が社のところに集まっていた。
「……ちっ、野次馬め」
「相沢くんがそういう事言っても、全然説得力ないわよ」
香里にあっさりと言われて、俺は降参の印に両手を上げて見せてから、話を天野に戻した。
「それで3人仲良く捕まって縛られてたわけか」
「……まぁ、そういうことです」
流石にばつの悪そうな表情を浮かべると、天野は2人に頭を下げた。
「お二人とも、私を助けにに来たばかりに……。すみませんでした」
「……別にいい」
「えへへっ、いいのようっ」
それぞれの表現で、天野の謝罪を受け入れる2人。
さて、と。
俺は男の方に視線を向けた。
「それで、あいつをどうするんだ? それに“鍵”とやらは?」
「今から、それを聞くことにしましょう」
天野は向き直った。
「た、助けてくれ……」
気絶していた男を社の外に引きずり出し(ちなみに引きずり出したのは、天野に頼まれた俺と北川である)、天野が喝を入れると、意識を取り戻した男は、周りを見回して状況を把握したのか、天野にすがりつかんばかりにして頼み始めた。
「助けろ、と言うのですか? 今更何を……」
「ち、違うっ! 俺があんたらを捕まえたんじゃないんだっ! 俺はずっとここに捕まってたんだっ!!」
「捕まっていた……?」
小首を傾げる天野。
男はこくこくと頷くと、べらべらとしゃべり出した。曰く、たまたまこの地にやって来たこと。不思議な“もの”に追われて(おそらく、例の2人の術者の“式神”のことだろう)、この社に逃げ込んだこと……。
「そ、そしたら、なんか黒いもんがぶわぁっと上がって、それっきりわけがわかんなくなっちまって……」
「……なるほど。そうだったんですか」
天野は頷いた。それから、佐祐理さんに声をかける。
「倉田先輩、ちょっと彼のこと、お願いします」
「はい、お任せください。あの、楽になさってくださいね〜」
佐祐理さんは男に優しく声をかけながら、世話を焼き始めた。まぁ、舞がじぃーっと見ているから、男が妙なそぶりを少しでもすればズンバラリンだろうけど、それでもちょっと……。お、久瀬がむっとしてやがるな。
一方、男の側を離れた天野に、香里が男には聞こえないように小声で話しかけている。
「あいつの言うこと、信じるの?」
「……疑えばキリはないんです。ただ……、彼からは、術者特有の気配のようなものが感じられません。あれほどの結界が張れるような力の持ち主には……」
「見えない、と?」
「ええ。ですから、本当に彼は囮で、術者自身は既にここにはいない……ということかもしれません」
「いない? でも、“鍵”は……」
「おそらく、その術者が持って行ってしまったのでしょう。そして、囮をこの場に残して、結界を張り、死人や骨蛇を仕掛けて置いた、と……」
天野は、唇を噛んだ。
「どうやら、私達は、してやられたようです……」
俺と香里は顔を見合わせ、それから佐祐理さんに水を飲ませてもらっている男の方に視線を向けた。
「……要するに、宝探しをして、ようやく見付けた宝箱を空けてみたら、『スカ』って書いてある紙切れ1枚だったってことね」
「さすが香里、的確な表現だが……」
それって、ものすごく嫌な事実だ。
香里は腕組みして、天野に視線を向けた。
「それで、これからどうするの?」
「とりあえず、術者の行方を追うしかないかと思いますが……」
天野は男の方に視線を向けた。
「彼をここに放置しておくわけにもいきませんし、さりとて一緒にというのも困ります。皆さんならある程度気心も知れている仲ですから、一緒の方がいいんですが、全く知らない人というのは……。一応、私達のような退魔師の存在は秘密になってるわけですし……」
「……判ったわ。それじゃ、あたしと栞が彼とここに残るわ」
「それなら俺も!」
しゅたっと手を挙げる北川。
「……いつからそこにいたんだ北川?」
「ふっ、愚問だな、同志相沢。美坂のいるところ必ず俺ありぐばっ!」
「大声で恥ずかしいこと言わないで」
その腹に肘打ちをたたき込みながら言う香里。だが、いつもはクールなその顔が赤くなっている辺り、栞に言わせると……、
「お姉ちゃん、可愛いですっ」
ということらしい。
「し、栞まで……」
「えへへっ。それに、祐一さんも当然、ここに残ってくれるんですよねっ!?」
俺の腕にしがみつくようにして言う栞。
俺は苦笑した。
「そうしたいのは山々だけど、そうもいかないらしくてな」
「えっ? どういうことですか?」
「当然っ、祐一は美汐や真琴と一緒に行くんだもんっ!」
そう言いながら、真琴が栞とは反対側の腕を取る。
「ダメですっ! 祐一さんに万一のことがあったらどうするんですかっ!」
「大丈夫ようっ! 真琴が絶対祐一は護るんだからっ!」
「さっき敵に捕まって縛られてたのは誰ですかっ!」
「あれはたまたま油断してただけようっ! だいたい、しおしおなんてっ……」
「ちょっと待ってください」
言い返そうとした真琴の前に手のひらを突きつけて止める栞。
「どうした、栞? あの日か?」
「そんな事言う人女の敵ですっ。ちょっと黙っててくださいっ」
怒られてしまった。
栞は、社をじぃっと見つめていた。それから3人が縛られていた柱に視線を向け、一つ頷く。
「……そうですよね、やっぱり」
「栞?」
香里が心配そうに、栞に声をかける。
栞はにこっと笑った。そして、まだ佐祐理さんに介抱されていた男のところに歩みよると、びしっと指さした。
「貴方を、犯人です」
「……洗脳探偵翡翠なんて、知ってる人の方が少ないぞ、栞」
「いっ、いいんですっ!」
というか、栞がどうしてそんなのを知ってるのかの方が気になったが、とりあえず追求は後回しである。
「は、犯人って、なんですか、いきなり……」
きょとんと聞き返す男。
俺は栞に訊ねた。
「つまり、この人が犯人、つまり魔物の封印を解いた術者だって栞は言いたいのか?」
「はい、そうです」
「でも、さっきの天野さんの話じゃ、術者はもうここにはいないって……」
香里の言葉に、栞は「いいえ」と首を振った。それから男に尋ねる。
「あなた、最初に言いましたよね? 俺があんたらを捕まえたんじゃない、って」
「そ、そうだっ、俺じゃないっ! 第一、俺はいままでずっと気絶してたんだぞっ!」
にっこり笑うと、栞は社に歩み寄った。そして、その壁に片手を置いて振り返る。
「ずっと気絶してたのに、天野さん達が捕まってたってことは知ってるんですね。すごいです」
「……」
男は沈黙し、俯いた。
それを見て、舞が冷たい声で言った。
「佐祐理、離れて」
「えっ? でも……」
戸惑う佐祐理さん。そして……。
「ふふふっ、思ったよりも早くばれたな」
男は含み笑いを漏らしたと思うと、すっと立ち上がり、佐祐理さんの背後に回った。
同時に、妙な“気”が男からあふれ出したのを、俺も感じる事が出来た。
この男が、死人や骨蛇を操っていたのだというのが、理性ではなく感覚で判る。
天野が唇を噛んだ。
「術師の気配がしないと思ったのは、“穏伏の術”だったわけですか……」
「全員動くな。動くと、このお嬢さんの顔が二目と見られなくなるぞ」
「きゃぁ!」
そのまま佐祐理さんの腕をねじりあげる男と、悲鳴を上げる佐祐理さん。
「佐祐理っ!」
「おっと、動くなって言ったはずだぞ」
助けに飛び出そうとした舞が、その言葉で動けなくなる。
久瀬が叫んだ。
「佐祐理さんを離せっ! 人質なら代わりに僕がなるっ!」
「断る。お前を人質に取ると、人質ごと攻撃されそうだしな」
ううむ、犯人のくせに的確な判断だ。
俺は、犯人をじっと見つめたまま、隣にいた天野に小声で尋ねた。
「どうする、天野?」
「あそこまで密着されてしまうと、うかつな術も使えません。まずはどうにかして倉田先輩からあの男を引き離さないと……」
天野は弓を片手に唇を噛んだ。
「せめて、少しでもあの男の注意が倉田先輩から逸れれば……」
「……わかった。やってみる」
「相沢さん?」
「天野、頼むぞ」
「……」
俺をちらっと見て、天野は微かに頷いた。
俺は、名雪に視線を向けた。
「名雪」
「祐一、どうしよう……」
不安そうな名雪を、俺は抱き寄せた。
「わわっ! ゆ、祐一っ、何する……」
驚きの声を上げかけた唇を、自分の唇で塞ぐ。
「……」
「ゆ、祐一っ! なにしてるのようっ!!」
「わわっ、そ、そんなことする人嫌いですよっ!」
「わーっ、ボ、ボク何も見てません聞いてませんっ!!」
それぞれの声を上げる3人。そして……。
「隙あり!」
びしぃっ
「うわぁっ!!」
男が悲鳴を上げながら、よろけて尻餅を付く。解放された佐祐理さんを、舞が素早く抱き留めていた。
「大丈夫、佐祐理?」
「う、うん……。だ、大丈夫だよ、舞」
硬いけれど、笑顔をみせる佐祐理さんにほっとして、俺は男の方に視線を移す。
どうやら、俺と名雪のキスシーンに気を取られた男を、素早く飛び込んだ天野が弓でしばきあげたらしい。
「ふっ。俺と名雪の愛の勝利だな」
「はっ、恥ずかしいよぉ、祐一〜」
そう言いながらもまんざらでなさそうな名雪と、その肩を抱きながら爽やかに笑う俺。
うん、完璧だ。
「あうーーっ!」
「祐一さん、ひどいですっ!」
「うぐぅ……」
……ふ。年少者にはこの高度な作戦が判らないとみえる。
「ボク、同じ歳……」
「とりあえず却下」
「うぐぅ、ひどいよぉ……」
俺は、とりあえずあゆの頭に手を置いてなだめながら、男と対峙する天野の方に視線を向けた。
天野は、弓の先をぴたりと男に突きつけていた。
「もう逃がしませんよ。さぁ、“鍵”はどこにあるんです?」
「……くくっ」
男は尻餅をついたままの姿勢で、含み笑いを浮かべた。
「もう遅い。ここまで時間が過ぎてしまえば、もはや“鍵”などあっても、我が獣は誰にも縛ることなど出来ぬ……」
天野は、表情を変えずに繰り返した。
「“鍵”はどこにあるんです?」
「……これだ」
男は、懐から鞘に収まった小刀を出して見せた。
天野は少し考えてから、言う。
「その場に置いて。舞さん、取ってもらえますか?」
「……うん」
舞は男が置いた小刀を拾い上げた。微かに悔しそうな顔をする男に、天野は静かに言った。
「もう隙は見せませんよ」
「さっきも言ったとおり、もう遅いんだぞ」
そう言う男に、天野は微かに笑みを浮かべた。
「本当に最後の最後の最後まで、希望は捨てない。そうすれば、奇跡だって起こるんです」
「その通りだぞ、美汐」
後ろから聞こえた声に、俺達は振り返った。
そこには、白い服(後で、浄衣(じょうえ)という、神事に使う白い狩衣だと教えてもらった)を着た八汐さんが、同じような服を着ている男達を背後に従えて立っていた。
そして、その八汐さんの隣には……。
「お母さんっ!」
名雪が声を上げて駆け寄った。そしてそのままの勢いで抱きつく。
「無事だったんだね〜。良かったよ〜」
「あらあら、名雪ったら」
秋子さんは、微笑みながら名雪の肩をそっと抱きしめた。それから、一歩遅れて駆け寄ったあゆと真琴の頭をそれぞれ撫でる。
「みんなには心配掛けたわね。ごめんなさいね」
「ううん、秋子さんが無事ならいいんだよ」
「そうようっ!」
あゆと真琴の答えを聞いて、嬉しそうに微笑む秋子さん。
一報、男は八汐さんを見て、顔色を変えた。
「貴様、天野八汐!? どうしてここに貴様が……」
八汐さんは苦笑して、天野に声をかけた。
「……美汐、お前は意外に知られてないな」
「宣伝してるわけでもありませんから。むしろ、私のことを知っていた先日の2人の方が、意外です」
その会話を聞いて、男ははっとして天野を見る。
「まさか、お前が天王蒼穹流当代の……」
「若くて申し訳ありません」
いや、若いと言うよりむしろ……。
あゆに暴露されるとやばそうな考えになってしまったので、とりあえずそこで思考を止めると、俺はがっくりとうなだれたまま八汐さんの配下の者に縛り上げられ、そのまま連れて行かれる男を見送った。
天野は八汐さんに訊ねる。
「それで、現状は?」
「とりあえず、長束の者に協力を仰いで、魔物をこれ以上大きくならないように押さえ込んでもらっている。もう少しならもちそうだ」
「判りました。鍵はここにありますから、すぐに封印の儀式を」
「ああ、手配させよう」
頷いて、八汐さんは配下の人たちの方に向き直ると、あれこれと指示を下し始めた。
天野はほっと一息ついて、俺達に向き直ると深々と頭を下げた。
「皆さん、ご協力ありがとうございました。どうやら、あとは私達だけで何とかなりそうですから、皆さんは旅館に戻っていてください」
「そうね、これ以上ここにいても邪魔になりそうだから、お言葉に甘えさせてもらうことにするわ」
香里が頷いて、栞に声をかける。
「それじゃ、あたし達は戻りましょうか」
「……そうですね」
既に儀式に入り始めた、八汐さん配下の人たちを見回して、栞はこくりと頷いた。そして、水瀬親娘の感動の再会を温かく見守っていた俺の腕に、そっと自分の腕を回す。
「あん? ……いててっ」
いきなり腕を抓られた。
「私の前であんなことした罰ですっ」
あんなことっていうのは、名雪と堂々とキスしたことだろう。
「あのな。ちゃんと正式な恋人とキスして、なんで栞に怒られないといけないわけだ?」
「なんででもですっ」
「理由になってないぞっ」
「栞ちゃん、祐一いじめたらダメだよ」
「きゃっ!」
いつ戻ってきたのか、名雪が俺の空いている方の腕を取りながら、いつもののんびりした口調で言った。
「び、びっくりしました〜」
胸に手を当てて大きく息を付く栞。
「祐一さん」
秋子さんの声に振り返る。
「あ、秋子さん。無事でなによりでした」
挨拶してないことを思い出してそう言うと、秋子さんは微笑んで首を振った。
「ありがとうございます。それより、祐一さんこそ、名雪達をちゃんと護ってくれて……」
「いえ、こちらこそ……」
頭を掻きながら間抜けな返事をした俺の目に写ったのは、手にした瓶の蓋を開けている秋子さんの姿だった。
「これは、お礼ですよ」
そして、次の瞬間、そこから飛び出したオレンジ色の物体が……。
「……っ!」
俺は跳ね起きた。
「わ、びっくり……」
後ろから、のんびりした声が聞こえた。振り返ると、名雪がにこにこしていた。
「目が覚めたんだね、祐一」
その背後には、社がある。とすると、時間はある程度たっているが、場所はそのままってことか。
だが、それより重要なのは、名雪はちょこんと正座をしていたということだ。加えてこの体勢。ということは……。
俺はそのまま、もう一度上体を倒した。思った通り、後頭部にふかっとした感触が伝わる。
「わ、祐一、また寝ちゃったよ」
「寝てないわい!」
名雪の顔を見上げて、俺は尋ねた。
「それより、あれからどれくらい時間がたった?」
「うーんとね、30分くらいかな?」
小首を傾げてから答える名雪。
「そんなに長いこと気絶してたのか、俺は……」
「うん。お母さんがね、祐一は疲れがたまってるから、寝かせておいた方がいいって……」
「疲れがたまってる?」
「うん。でも、わたしちょっとびっくりしたよ。祐一、いきなり倒れるんだもん」
「いきなり……倒れた?」
「うん」
名雪の表情を見る限り、どうやら俺が本当に疲れで倒れたと思っているようだ。
……そうだよな。あのオレンジ色の何かはきっと夢だったんだ。うん、そういうことにしておこう。
「でも、良かったよ……、みんな無事で……」
本当に嬉しそうに微笑む名雪。
みんな無事、ってことは、うまくいったって、ことだよな……。
「それで、みんなはどうしたんだ?」
「旅館の方に戻ってるよ。久瀬さんや、天野さんの親戚の皆さんも……。わたしは……、祐一が起きるまでここにいるって言ってるから」
安心したら……、なんだか……。
「なぁ、名雪……」
「うん、どうしたの、祐一?」
「……もう少し、眠っててもいいかな?」
「うん。わたし、ずっとここにいるからね」
俺は目を閉じた。
「祐一、子守歌、歌ってあげようか?」
「そうだな、頼む……」
名雪は、歌い始めた。
「♪〜」
「こらっ!」
「わ、びっくり」
「……頼むから、『誰のせいでもないふたり』はやめろ」
「うう、残念……」
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あとがき
本編最後のオチになっている「誰のせいでもないふたり」は、DC版で名雪役を演じていた國府田マリ子さんの持ち歌の一つです。
知っている人は知っているんですが、かなり古い歌なので内容を書いておくと、恋人と別れることになってしまった女の子が、別れることになったのはあなたのせいじゃないので、自分を責めたりしないで、という……。
まぁ、祐一じゃなくても、恋人にこんな歌を歌われると、ぎょっとするでしょうね(笑)
そういえば、じお支店が先日100万ヒットを記録しました。この場を借りてお礼申し上げます。
……こっちとしては全然実感ないんですが、約2年で1Mヒット……。うちってそんなに人気のあるサイトなんでしょうか? いや、まじに。
本店やさくら支店のカウンタがそれほど上がってないのに、じお支店だけ上がっていくのは、なんだか妙ですが。
DC版あとがき
公開時の38話にちょうど割り込む形で、エピソードを追加しています。
PS
一部、改行がおかしくなっていた部分を修正しました。
プールに行こう5 Episode 39(DC) 01/9/3 Up 01/12/20 Update