少しすると電気が一斉につく。
そして目の前には、水面に顔だけを出してたたずむエヴァンゲリオン初号機。
『・・・母さん・・・・』
「これはね人の作り出した究極の汎用決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン」
「これが僕の呼ばれた理由ですか?」
「そうだ」
ゲイジに重苦しい声が響く。
シンジは相手を確認することもなく誰だかわかっていた。
「久しぶりだな」
威圧的な態度でシンジを見下している碇ゲンドウ。
以前のシンジであれば、ゲンドウの顔もまともに見れなかったであろうが、今のシンジにはもはやゲンドウなど眼中になかった。
「3年ぶりかな?」
ゲンドウの気持ちはレイから受け取った知識では知っている。
悲しいやつだとは思う・・・しかし・・・・
『でも・・・レイを道具にしたり、トウジを殺したことは決して許されることじゃない!!』
「シンジ、私が今から言うことをよく聞け。
これにはおまえが乗るんだ。そして、使徒と戦うのだ」
「ちょ、ちょっと待ってください司令!!」
ミサトがゲンドウの言葉に反応する。
「綾波レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかったんですよ!
今日きたばかりのこの子にはとても無理です!!」
「すわっていればいい。それ以上は望まん」
「しかし!!」
「葛城一尉!」
リツコがミサトを止める。
「今は使徒撃退が最優先事項よ。
それとも、ほかにいい方法があるとでもいうの?」
確かに方法はない。
ミサトはリツコの言葉に押し黙ってしまう。
「さ・・・シンジ君。こっちへ来て」
『やれやれ、やっと口論が終わったか』
シンジはゲンドウを見上げる。
「父さん」
「なんだ?」
「乗ってもいいけど、条件があるよ」
「乗った後で聞いてやる」
「今聞いてほしい条件が1つだけあるんだ」
「いってみろ」
「綾波レイに会わせてよ」
「「えっ!!」」
ミサトとリツコの声が見事にユニゾンする。
ゲンドウもこちらからわかるほど変化を表した。
「なぜ、レイのことを知っている?」
ゲンドウの目線が少し鋭くなっている・・・が、シンジはぜんぜん感じていない。
「そんなことはどうでもいいだろ。で、かなえてくれるの?」
笑いながらゲンドウを見るシンジ。
「冬月、レイをこっちへよこせ」
「使えるのかね?」
「戦わせるわけではない」
しばらくすると重症のレイが運ばれてきた。
シンジはレイの姿を見かけると一目散にそばにかけよる。
「レイ、大丈夫?」
シンジはやさしくレイの頬に自分の手のひらを重ねる。
「シンジ君・・・」
レイもシンジの頬に手を伸ばそうとするが、体に激痛が走る。
「無理しないで!使徒は僕が倒してくるから、安心して」
「うん」
その言葉を聞き安心したのかレイは眠りについてしまう。
一方、ミサトとリツコのほうはレイとシンジがなにを話しているのか気になって聞き耳を立てていたが声が小さいため聞き取れなかった。
「約束どうり、僕が乗るけど・・・後の条件は終わった後に聞いてもらうからね」
シンジはゲンドウを見上げるとそう言い放った。
「わかった。赤木博士、説明を」
「わかりました。シンジ君こっちへ来て」
シンジは黙ってリツコの後をついていく。
『主電源接続』
『全回路動力伝達』
『起動スタート』
『A10神経接続異常なし』
『初期コンタクト全て異常なし』
『双方向回線開きます』
「やるわね、あの子」
「ええ、驚くぐらいスムーズに進んでるわ」
「シンクロ率41%で安定」
「すごいわね、初めてで41%なんて」
「いける!!」
『・・・母さん・・・うん・・・・でも少しおさえないとね・・・・そう・・・・ありがとう』
起動もうまくいったようだな。
シンクロ率もばれることはないだろうしね。
今はこれでいいかな。
「シンジ君、いいわね」
ミサトがシンジに確認を求める」
「はい」
「いけるわ」
「エヴァンゲリオン初号機発進準備」
『五番ゲートスタンバイ』
『進路クリア、オールグリーン』
『発進準備完了』
「碇司令、かまいませんね」
ミサトはゲンドウに最終確認をとる。
「無論だ、使徒を倒さぬ限り我々に未来はない」
いつものポーズを崩さず言う。
「発進!!」
その言葉とともに初号機は地上に射出される。
目の前には第3使徒サキエルがこちらを見ている。
「最終安全装置解除。エヴァンゲリオン初号機リフトオフ!」
ネルフにいる人全員が息を飲む。
シンジは目でサキエルの動きに注意しながら考えていた。
『前回はやられたけど今回はそうはいかない。
トウジの妹ってどこにいるんだろう?
やられた振りしてあたりを探すか』
「シンジ君、今は歩くことだけ考えて」
スピーカーからリツコの声が聞こえる。
『敵を目の前にして歩く指示とはね、今思えばかなり間抜け』
シンジは軽くため息をはく。
『この辺にはいないようだけど・・・』
シンジがトウジの妹を探していると一瞬のうちにサキエルが突っ込んできた。
後ろに飛びながら衝撃を避けるシンジ。しかし、それでも数百メートル飛ばされてしまう。
「くっ!!」
『油断した!!』
シンジが立ち上がろうとした先には・・・・
トウジの妹ナツキちゃんが腰を抜かして座り込んでいた。
「民間人があんなところに!!」
「保安部に連絡して保護させて!!」
『まずい!!こんなところにいたなんて・・・・』
シンジはナツキをかばうようにサキエルに背を向ける。
「シンジ君!!」
サキエルは遠慮なしに光線を撃ってくる。
「ぐっ・・・く、くそ・・・」
ナツキはまだ呆然としている。
状況がつかめていないのだ。
『どうすればいい・・・・・いったいどうすれば・・・』
シンジがこの状況をどうにかしようと考えているとき、ナツキの体が不意に抱きかかえられた。
シンジもよく知っている人物。
「ショウ!!」
「また民間人!!」
「保安部はまだなの!!」
ショウはナツキを抱きかかえると初号機にむかって笑いながら親指を突き出す。
そのまま戦線を離脱した。
『ありがとう、ショウ』
シンジは一気に起き上がるとサキエルにむかって駆け出すが・・・・
サキエルはATフィールドをはり接近させまいとする。
「ATフィールド!!」
「だめだわ、ATフィールドがある限り・・・」
「使徒には接触できない・・・」
ミサトとリツコが愕然としているところに報告が入る。
「初号機もATフィールドを展開!位相空間を中和していきます」
「やはり、エヴァも使えたのね。でも、シンジ君がなぜ・・・」
「これで終わりだ!!」
一瞬のうちにATフィールドを中和し、初号機の拳がサキエルのコアにぶち当たる。
サキエルが初号機とともに自爆しようと絡みつくが、初号機に蹴り上げられ上空で爆発してしまった。